トキを計るための拠りどころとしての花
「旧暦には二つの時間がある。ひとつは、月の巡り、もうひとつは四季の巡りだ。花は古くからトキを計るための拠りどころとされてきた。田植えの準備を始める頃に咲く辛夷(こぶし)の花は「田打桜」とも呼ばれる。天候によって毎年変わる農事暦の重要な目安とされ、人々はその咲き方で吉凶を感じてきた。桜のサは聖なる穀霊。クラは神座、山から田の神が舞い降りるヨリシロと見られたことが、名の由来で、サクラは桜以外の花をさすこともある。辛夷を目安に大豆を植えたり、鯛やサワラ漁に出る地方もある。大木の辛夷は眩しいほどの白さで、空の青さを際立たせる。『大空の雀をつまむは花辛夷』(茶箱)」
旧暦ダイアリー「旧暦日々是好日」より転載